※これは『アイドルマスター』と『ポケットモンスター』のクロスSSです。『アイドルマスター』のキャラクターが『ポケットモンスター』の世界の役者を演じるという形式のドラマになります。物語はアニメ『ポケットモンスター THE ORIGIN』のその後の世界をアイドルたちが冒険するというものです。オリジナル設定なども出てきますので、そういうのが嫌いな方はバック推奨です。連載は不定期です。
ポケットモンスター THE ORIGIN 外伝
~ナナシマ 新たなる誓い編~
主演:菊地真
キャスト:
萩原雪歩
我那覇響
日高愛
水谷絵理
秋月律子
秋月涼
双海亜美(竜宮小町)
双海真美
ひかり(新幹少女)
つばめ(新幹少女)
のぞみ(新幹少女)
東豪寺麗華(魔王エンジェル)
三条ともみ(魔王エンジェル)
朝比奈りん(魔王エンジェル)
日高舞(特別出演)
▸つづきからはじめる
さいしょからはじめる
せっていを かえる
レポート3「ロケット団」
ナナシマ、2の島上空。
ピジョットに跨った一人の少女がポケギアを通じて誰かと会話をしていた。
「例の謎の怪電波が発生しただって!?場所は!?」
「………うん、1の島の「ともしび山」だな?……その山に住むドンメルたちが!?」
「………分かったさー!今すぐ現場へ向かうぞ!ピジョ吉、頼むぞ!」
通話を終えると、少女は進路をほてりび山へと向け、高らかに宣言する。
「ポケモンレンジャー・ヒビキ、出動さー!」
マコト「エルレイド、『サイコカッター』!」
ユキホ「サーナイト、『サイコキネシス』!」
マコトの色違いのエルレイドと、ユキホの色違いのサーナイトの攻撃が、ドンメルたちに直撃するが、圧倒的に数が多すぎるため、次から次へとドンメルたちが襲い掛かってくる!
ユキホ「ううっ…、これじゃきりがないですぅ~…」
マコト「なんとかしないと…、そうだ!ねぇユキホ、ちょっとだけ時間稼いでくれない?」
ユキホ「え?どうして?」
マコト「脱衣場に置いてきた“アレ”を持ってくるんだ!」
マコトとユキホは温泉からエルレイド達の入ったモンスターボール1つだけを持って飛び出してきたので、今はバスタオルを巻いただけの、何も持っていない状態だ。
当然、バトルに必要な道具などはバッグごとまだ脱衣場にある。
ユキホ「…分かった、でもあまりもたないかもしれないよ?」
マコト「大丈夫、すぐ戻ってくるから!」
ユキホ「うん!サーナイト、『かなしばり』!」
サーナイトの『かなしばり』で一時的に動きが封じられたドンメルたち。
その隙にマコトは脱衣場へと戻り、バッグの中から先ほどリョウから受け取ったばかりの“キーストーン”を取り出し、エルレイドには“エルレイドナイト”を持たせて再び外へ!
マコト「お待たせ、ユキホ!」
ユキホ「急いでマコトちゃん!もうすぐ『かなしばり』の効果が…!」
ユキホのセリフが終わる前に、動きを取り戻したドンメルたちが再び襲い掛かってきた!
マコト「よーし、エルレイド、新しい力を試す時だ!」
マコト「メガシンカ!!」
マコトはキーストーンに指を当て、強く念じる!
だが、エルレイドには何の変化も起きない。
ユキホ「………、えっと、マコト、ちゃん?」
マコト「………、あ、あれ…?」
ユキホ「マコトちゃん、まだメガシンカを…」
マコト「ああ、そうこうしてる間にドンメルたちが!
ええい、今はともかく攻撃だ!『サイコカッター』!!」
自身の身に何も起こらず、一瞬呆けていたエルレイドだったが、そんなこととは関係なしに襲い来るドンメルたちの群れに我に返り、『サイコカッター』で向かってくるドンメルたちを押し返す。
が、多勢に無勢、圧倒的数の差の前に、さすがに打つ手がなくなる。
マコト「う~ん、メガシンカすれば何とかなるかと思ったんだけど…」
ユキホ「あ、あのね、マコトちゃん、メガシンカってそう簡単に出来るもんじゃないし、それにメガシンカしたとしても、何とかなるとは思えない数なんだけど…」
マコト「う~ん、それもそうか…
何か別の方法を考えないと…」
ユキホ「それなんだけど、あそこ、群れの中心にいるバクーダなんだけど…」
マコト「あの1匹だけいるバクーダだよね?ボクも気になってはいたんだよね。
あいつだけ動かず、なんとなくリーダーっぽい感じだけど…」
ユキホ「うん、だから思ったんだけど、あのバクーダをなんとか戦闘不能に出来ないかなって」
マコト「ポニータを射んとすればまず将を射よ、ってヤツだね!?」
ユキホ「逆だけどね。まあ、そんな感じ、かな?」
マコト「だったら、ボクらに任せて!エルレイド、バクーダに『かげうち』だ!!」
エルレイドは自身の影に身を潜め、影から影へと移動して、一気にバクーダまでの距離を縮める!
ユキホ「サーナイトはエルレイドの援護を!『ムーンフォース』!!」
両手を天空へと突出し、昼でもわずかに輝く月からエネルギーを得たサーナイトは、それを光の巨大な球へと変換し、一気に地上のドンメルたちへとぶつける!
ドンメルたちが吹き飛ぶ中、バクーダの影へと侵入したエルレイドは、そこから姿を現し、バクーダとの距離がゼロになる!
マコト「エルレイド、『インファイト』!!」
突然自分の真後ろに現れたエルレイドに驚きを隠せないバクーダに、ゼロ距離格闘技を放つエルレイド!
だが、その攻撃を耐えるバクーダ!
その目は血走っており、何者かに操られるかのように気が高ぶっている。
その状態でバクーダは『オーバーヒート』を放った!
自分自身を中心に、味方のドンメルたちまでも巻き込んだ超強力な『オーバーヒート』!
至近距離で直撃を受けたエルレイドはその熱風で数メートル以上も吹き飛び、森の木に激突してダウン!
一方、マコトたちはサーナイトが咄嗟に『マジカルリーフ』を『サイコキネシス』で固めた簡易防御壁で、かろうじて直撃は避けることが出来た。
しかし、周りのドンメルたちや、技を放ったバクーダ自身もかなりのダメージを負ったようだ。
それでも、バクーダはまだ闘気をマコトたちに向けている。
『バアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!!!!』
バクーダの異常とも言える鳴き声がこだまする。
ユキホ「やっぱりあのバクーダ変だよ!」
マコト「異常すぎる、あの『オーバーヒート』にしても、あそこまでの威力を出せるなんて…」
最早打つ手なし、迫りくるバクーダに追い込まれたマコトたちだったが、その時!
「2人とも、耳を塞ぐんだ!!」
突然上空から少女の声が響いた!
言われたとおりに耳を塞ぐマコトとユキホ(とサーナイト)。
「オウ助、『ばくおんぱ』!!」
ペラップァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!
耳を塞いでいても鼓膜が割れそうなほどのペラップによる『ばくおんぱ』が辺り一帯に響き渡る!
さすがのバクーダも、これには意識を一瞬持っていかれたようで、隙が出来る!
「今だ、キャプチャスタイラー!」
先ほどまで上空にいた少女が地上に降り立ち、持っていたコマのような道具をバクーダ向けて放つ。
そのコマはバクーダの足元の地面に落ち、そのまま少女が腕をグルグル円軌道で回すのに合わせてコマがバクーダの周囲を回り始め、ラインを描く。
そして、何週かすると、そのラインが光り輝きだす。
「よーし、キャプチャーーーーーーー、オンッ!!!!」
少女がそう叫ぶと、光はバクーダ全体を包み込む。
そうして光が収まると、バクーダは正気を取り戻していた。
「やった、キャプチャ成功だ!もう大丈夫だぞ、バクーダ!苦しかったよな?」
そう言いながら、ポケモンレンジャーの少女はバクーダの元へとかけより、バクーダの背中や頭をなでてあげた。
正気を取り戻したバクーダは、ドンメル達を連れて、山へと戻って行った。
「いやー、二人とも危なかったね!」
マコト「君は…!」
ユキホ「まさか、ヒビキちゃん!?」
ヒビキ「はいさい!久しぶりだね、マコト、ユキホ!」
ヒビキはボクとユキホの幼馴染で、同じ日にマサラタウンから旅立った友達であり、ライバルだ。
ポケモントレーナーとして旅立ったボクたち3人だったけど、旅の中で次第にそれぞれの目標を見つけ、ユキホはポケモンブリーダーに、そしてヒビキはポケモンレンジャーになっていた。
現場が落ち着いたところで、ボクたちは今回の件を詳しくヒビキから聞くことにした。
ヒビキ「今回が自分が見習いを卒業して最初の任務なんだ!」
マコト「任務って?」
ヒビキ「うん、最近ここナナシマで謎の怪電波によって野生ポケモンたちが操られている事件が起こってるんだ」
ユキホ「最近ニュースになってる件だよね、野生ポケモンたちの豹変…
でも、それって人為的なものだったの?」
マコト「さっきのバクーダ、明らかに様子がおかしかったけど、その怪電波に操られてたってこと?」
ヒビキ「うん、間違いないさー。
でもキャプチャスタイラーで正気に戻してあげたから、もう大丈夫のはずさ!」
マコト「キャプチャスタイラー、聞いたことあるよ。
確か、人間と野生ポケモンの心を通わせるための道具…」
ヒビキ「うん、ポケモンレンジャーは基本的にはパートナーポケモン以外の手持ちポケモンは持たないんだ。
ちなみに、自分のパートナーポケモンはこのペラップのオウ助と、デデンネのデデ蔵だぞ!
レンジャーはその場その場において、野生ポケモンたちの力を借りて事件を解決する。
そのために使うのがこのキャプチャスタイラーなんだ。
また、それだけじゃなくて、今回みたいに敵に操られたポケモンたちを解放するためにも使えるんだ!」
ユキホ「それで、一体犯人は…?何のために野生ポケモンたちを…?」
ヒビキ「目的はまだ分かってないんだ。でも、犯人の正体なら掴んでるぞ」
マコト「それは?」
ヒビキ「ロケット団だぞ」
ロケット団。
一年前、何者かによって解散に追い込まれた悪の組織。
ポケモンたちを使って悪事を働いてきたその組織が、ここナナシマで今また暗躍しているという。
ボクとユキホはヒビキが乗っていたピジョット(このピジョットは野生ポケモンらしい)に乗って、現在ヒビキたちの前線基地がある3の島へとやってきた。
とある民家に案内されたボクたち。
見た目も内装もごく普通の一般家屋だったが(気になったのはテーブルの上にいたヤドンくらい。全く動かないから最初は人形かと思ったら、どうやら本物のヤドンのようだ)、ヒビキが部屋の奥に貼ってあるヤドンのポスターをはがし、その裏に隠されていたヤドンの顔をしたスイッチをポチっと押すと、なんと床から隠し階段が現れた!
地下へ続く階段の壁にもたくさんのヤドンのポスターが貼ってあったが、ここの家主はよほどヤドンが好きらしい…
階段を下りて行ったボクたち3人を迎えていたのは、いくつものモニターやらよく分からない機械に囲まれた部屋の中央で座る一人の少女だった(ちなみに座っていたイスの背もたれにもヤドンの絵が描かれていた)。
ヒビキ「エリー、紹介するぞ。この2人は自分の親友のマコトとユキホ!
マコトとユキホ、彼女が自分の上司、ポケモンレンジャーカントー支部ナナシマ派出所チーフのエリだ!」
ユキホ「え、えっと、初めまして、ブリーダー修行中のユキホですぅ…」
マコト「初めまして、マサラタウン出身のポケモントレーナー、マコトです」
エリ「初めまして?2人のことはヒビキさんから聞いて知っていました。
今も、先ほどまでの戦闘状況をモニターから見ていました。
マコトさんとユキホさん、なかなかいいスタイルをお持ちで?
バッチリRECさせていただきました、バスタオル姿のお二人のエロス…、素晴らしい…!」
マコト・ユキホ「「!?」」
ヒビキ「ちょ、エリ!?」
エリ「と、まあ冗談はおいといて?」
ヒビキ「冗談に聞こえないぞ!?」
エリ「単刀直入に言います。
お二人に、今回の事件解決のための手伝いをして欲しい?」
マコト「ボクたちに手伝いを…?」
ユキホ「………」
エリ「モニターから見ていた限り、二人のトレーナーとしての腕は十分?
正直な話、今回の事件はヒビキさんだけでは難しいと判断しました」
ヒビキ「な、なんで!?自分、そんなに頼りない!?」
エリ「いえ、そうじゃありません。
規模が私たちの予想を超えて大きくなりそう?」
エリが言うことをまとめるとこんな感じだ。
他の場所で情報を集めていたレンジャー仲間たちからの新情報により、ナナシマで活動しているロケット団残党は幹部クラスの者たちらしいとのこと。
しかも、かなりの強者が数人いるらしい。
ヒビキはポケモンレンジャーとしては新人だが、すでにその才能は目を見張るものがある。
元々ヒビキは、ポケモンたちの気持ちが分かるトレーナーだった。
野生ポケモンたちともスタイラー無しで心を通わせることが出来る。
まさに、ポケモンレンジャーになるべくしてなったような人物だ。
だが、今回の敵はレンジャーとしての能力以上に、トレーナーとしてのバトル経験、それもかなりのハイレベルな経験が必要となる。
そう言う意味でヒビキはやや不利だった。
エリ「だから、トレーナーとしての確かな実力を持ったマコトさんと、ブリーダーとして確かな実力を身に着けたポケモンを持つユキホさんの力が必要?」
マコト「なるほどね、ボクはいいけど、ユキホはどうする?」
エリ「もちろん、お礼はいたします。ですから、」
ユキホ「うん、いいよ。私も手伝えることがあるなら手伝いたい」
マコト「ユキホ…!」
ちょっと意外だった。
優しすぎて、バトルが苦手になるような女の子だったユキホが、ここまで積極的になるなんて…
ユキホ「あんな…、無理矢理にポケモンたちを操っちゃうなんてこと、許せない…!
だから、これ以上罪もない野生ポケモンたちが苦しまないように、ロケット団を一刻も早く追い出そう!」
やっぱりユキホはユキホだった。
優しくて、芯の強い、昔から変わらないユキホだ。
エリ「ありがとうございます。
それから、マコトさん?」
マコト「うん、なに?」
エリ「メガシンカ、のことですが…」
マコト「…!エリは、メガシンカを知ってるの!?」
エリ「いえ、私も詳しくは知らない?
でも、メガシンカに詳しい人のことは知ってる?
連絡がつくかは分からないけど、よかったらその人を紹介しましょうか?」
マコト「うん、お願いするよ!ありがとう、エリ!」
メガシンカ、さっきのバトルでは発動しなかった。
メガシンカするのに何か条件があるのか?
それが分かれば、ボクとエルレイドはもっと強くなれるのか?
このナナシマに魔の手を伸ばす、ロケット団にも対抗できる力になるかもしれない。
今は、どんな情報でもメガシンカのことが知りたかった。
その日、ボクはユキホが今住んでいる4の島の家に泊めてもらうことになった。
久しぶりに再会したエルレイドとサーナイトの兄妹はボクらには分からない言葉で会話をして楽しんでいた。
ボクとユキホも、数年ぶりに一緒に食事をして、同じ布団に横になって、色んな話をした。
翌日早朝、ボクは4の島北東にある「いてだきの洞窟」にやってきた。
メガシンカの特訓をするためだ。
エリから、今日の昼にはメガシンカに詳しい人物がナナシマに到着するという話を聞いたが、それまでになんとか自分だけの力でなんとかならないかと思い、ここにやってきたのだ。
ボクはボールからエルレイドを出し、一緒に洞窟へと入って行った。
洞窟の中にはズバットやゴルバットのほかに、パウワウやジュゴンといった水ポケモンや氷ポケモンたちがいっぱい生息している。
マコト「よし、エルレイド、久しぶりの特訓だ!いくよ!」
エルレイドと視線を交わすと、ボクたちは野生ポケモンたちの群れへと飛び込んで行った!
マコトたちが「いてだきの洞窟」の奥へと入って行ってから数分後、3人組の黒い服を着た少女たちが洞窟の入り口へとやってきた。
「ここが「いてだきの洞窟」…」
「うぅ~、ここ寒いよ~、早く帰ろうよ~!」
「ちょっとツバメ、今来たばっかじゃない!何速攻で帰ろうとしてんの!」
ツバメ「あ痛ッ!殴らなくてもいいじゃん、ヒカリのバカ!ちょっとした冗談に決まってるでしょー」
「そんなことより、なんで私たちこんな所に…?」
ヒカリ「え、ノゾミ、あんた任務の内容忘れたの!?」
ツバメ「資金集めのために、野生ポケモンたちを大量に捕獲して売りさばくためだよ」
ヒカリ「例の怪電波発生装置を動かすには莫大な資金が必要みたいだからね、そのためよ」
ノゾミ「ああ、そうだっけ」
ヒカリ「もう、ノゾミってば、リーダーたちの話まともに聞いて無かったわね?」
ツバメ「ノゾミ、最近例のポケモントレーナーに夢中だよね…」
ヒカリ「ホウエンリーグに挑戦して敗退したって言うあの…?」
ツバメ「リーグ優勝したってならまだしも、敗退したっていうのがね…」
ノゾミ「そんなの関係ないの!だって、リーグに挑戦してるお姿がカッコ良かったんだもの!!」
ヒカリ「…ノゾミ、分かってるとは思うけど、あたしたち“ロケット少女”は悪で、世間の影なのよ?」
ツバメ「そうそう、ポケモントレーナーなんて光の存在に恋しても報われないのよ?」
ノゾミ「分かってるけど好きなの」
ヒカリ・ツバメ「「あ、そう………」」
ロケット団の下っ端団員、“ロケット少女”の3人組は自らに課せられた任務のために洞窟へと入っていった。
マコト「エルレイド、メガシンカ!!」
再びボクはキーストーンに力を込め念じる。
が、やはりエルレイドに変化はない…
洞窟に入ってから野生ポケモンたちを相手に何度も試すが、一度も成功しない。
メガシンカ。
ポケモンの究極の進化。
それはポケモンだけの力ではなく、トレーナーとポケモンとの間で起こる現象だという。
それに必要なキーストーンもメガストーンもある。
だとするなら、あと何が必要なのか?
足りないものがあるとすれば、それはボクの方…?
そんなことを考えていると、隣にいたエルレイドがボクに何かを伝えようとしていた。
マコト「エルレイド?どうかしたの?」
エルレイドはボクたちが入ってきた洞窟の入り口の方向を指して険しい表情を見せていた。
…何か、いる?
そういえば、野生のポケモンたちが何か慌ただしい…
耳を澄ませてみると、複数の人の声もする。
<あはははは、大量、大量!!
<おっと、そこのポケモンちゃん逃げてるんじゃないよ!
<大人しく捕まりなさい!!
まさか、野生のポケモンたちを乱獲している…!?
マコト「ひょっとしてロケット団の仕業!?」
ボクは一旦エルレイドをボールに戻し、来た道を引き返していった。
はたして、その先にいたのは、胸に「R」の文字が入った黒い服を着た3人の少女たちだった。
マコト「お前たち、こんな所で何やってるんだ!!」
ヒカリ「!?『こんな所で何やってるんだ!!』と聞かれたら、」
ツバメ「答えてあげるが世の情け、」
ノゾミ「世界の破壊をふせg…って、ああアナタは愛しのマコト様!?」
ヒカリ「って、ノゾミのバカ!せっかくの決めシーンなのに、何ぶち壊してくれてんの!?」
ノゾミ「だって、TVで見たあの愛しのマコト様が、今目の前に!!
ああ、これは夢!?ゆ~め~な~ら冷~めないで、い、て!!」
ツバメ「大空を飛ぶ鳥のように翼を広げて羽ばたきそうな勢いね、今のノゾミってば…」
ヒカリ「はあ、ツバメも何上手いこと言った風になってるのよ…」
マコト「………えっ…と?」
あれ、ロケット団だと思ったんだけど、ひょっとしたらコスプレ芸人トリオだった、のかな?
ヒカリ「アンタ、今失礼なこと考えてたでしょ?」
ツバメ「生意気!ホウエンリーグ敗退した一般トレーナーのくせに!
私たちロケット団に刃向おうとするなんて10年早いってーの!」
マコト「なんだかボクのこと知ってるみたいだけど、今はそんなことどうでもいいや。
君たちは、やっぱりロケット団なんだね?
それで、ロケット団がこんな所で何を?」
ヒカリ「『こんな所で何を?』と聞かれたら、」
ノゾミ「ハイハイ、マコト様!
私たちは今、怪電波発生装置を動かす資金集めのために、密売用の野生ポケモンたちを大量に捕獲しています!」
ヒカリ「あ、こらまた決めシーンをぶった切ってくれちゃって、ノゾミ今度こそ許さないわよ!」
ツバメ「いや、そっちよりも仕事のことばらしちゃったほうが問題でしょ!?」
やっぱり、芸人トリオの間違いなんじゃ…?
ヒカリ「ああ、もういいわ!このままじゃ話が進まない!
とりあえず、私たち“ロケット少女”の姿を見たものをこのまま黙って返すわけにはいかない、ってね!」
ツバメ「ここで私らにあったことを後悔しな!」
ノゾミ「ああ、マコト様!マコト様とバトル出来るなんて…!」
そんなことを言いながら彼女たちが繰り出してきたのは、アーボック、マタドガス、ニャースの3匹!
マコト「トリプルバトルか、いいよ、そっちがそうくるなら受けてあげる!
いけ、リザードン、ルカリオ、ライチュウ!」
ヒカリ「アーボック、ライチュウに『まきつく』!」
ツバメ「マタドガス、リザードンに『ヘドロばくだん』!」
ノゾミ「ニャース、ルカリオに『みだれひっかき』!」
マコト「リザードン、『ねっぷう』だ!」
マコトのリザードンの『ねっぷう』が、向かってくる“ロケット少女”のポケモンたちを吹き飛ばす!
ヒカリ「熱ッ!?」
ツバメ「この熱風じゃ近づけないよ!」
ノゾミ「私の恋の炎はこんなもんじゃないわ、もっと熱いの!」
リザードンの『ねっぷう』は、“ロケット少女”のポケモンたちにとっては向かい風だったが、マコトのポケモンたちにとっては追い風となる!
マコト「ルカリオ、ニャースに『はどうだん』!」
ルカリオが合わせた両掌の中に、波導の塊が収束していき、それを弾に練り上げて放つ、ルカリオ必殺の技『はどうだん』!
『ねっぷう』を追い風に、目にも止まらぬ速さの『はどうだん』がノゾミのニャースに直撃する!
ノゾミ「ああ、ニャースちゃん!!」
ツバメ「くっ、速過ぎる!!」
ヒカリ「こっちからもなんとか攻めなきゃ!
アーボック、『あなをほる』で地中から…」
マコト「ライチュウ、アーボックに『10まんボルト』!!」
いつの間にかヒカリのアーボックの背後に忍び寄っていたマコトのライチュウは、アーボックを羽交い絞めし、そのまま渾身の『10まんボルト』を放つ!
ヒカリ「キャー、アーボックー!!」
ツバメ「くっ、こうなったら死なばもろともよ!マタドガス、『だいばくはつ』!!」
マコト「なっ!?こんな洞窟で『だいばくはつ』を使ったら…!」
ドガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアン!!!!
ツバメのマタドガスの『だいばくはつ』により、その場の天井が崩れ落ちてしまい、危うくマコトは生き埋めになるところだったが、リザードンとライチュウをボールに戻し、ルカリオの『しんそく』によってその場から無事に離脱することが出来た。
穴が開いてしまった洞窟の天井から強い日差しが差し込む。
洞窟の中にいたせいで外の光が異様に眩しく感じる。
マコト「全く、無茶苦茶だな、あの子たちは…」
埋まってしまった洞窟を見ながら呟くマコトだったが、その時別の視線を穴の開いた洞窟の天井側から感じ、咄嗟に戦闘態勢をとるマコトとルカリオ。
マコト「誰だ、そこにいるのは!?」
「うふふ、私に気付くなんてなかなか鋭い子ね~」
逆光で見にくいが、黒い服を着た女性?
彼女が立つ岩の脇には、先ほどの“ロケット少女”の3人がいた。
ヒカリ「ああ、リン様、助けに来てくれたんですね!」
リン「別にアンタたちを助けに来たわけじゃないわよ?
こっちの任務が終わったから、様子を見に来ただけ。
アンタたちおとぼけ3人組がちゃんと仕事出来てるかどうかの確認にね~」
ツバメ「おとぼけ3人組…」
リンと呼ばれた少女も、やはりロケット団か!
なら…!
マコト「ルカリオ、『はどうだん』!!」
先手必勝とばかりにボクはルカリオに『はどうだん』を命じるが、
リン「キュウコン、『オーバーヒート』よ!!」
ルカリオが『はどうだん』を放つよりも早く、『オーバーヒート』の炎がルカリオに届く!
マコト「ルカリオ!?」
キュウコンの『オーバーヒート』が直撃し、ルカリオはきぜつしてしまった…!
ボクはすぐにルカリオをボールに戻す。
まさか、一撃で倒されるなんて…!
確かにルカリオに効果抜群の技ではあるが、それにしてもこの火力は…!?
マコト「まさか、“ひでり”…?あの異様に眩しいと感じた日差しの正体は…!」
リン「ご名答!私のキュウコンの特性は“ひでり”。
イッシュ地方で確認されている珍しい隠れ特性を持ったキュウコンよ」
マコト「イッシュ地方の、隠れ特性を持ったキュウコンだって…!?」
リン「私らロケット団の中にイッシュ出身の奴がいてね。
そいつから色々と珍しいポケモンを奪っt…じゃなくて分けてもらったのよね~」
ひざしが強い状態では、炎タイプの威力が格段に上がる。
それで、『オーバーヒート』があれだけの威力を…!
だったらこちらも!
マコト「それならこっちも炎ポケモンで対抗だ!リザードン、『ブラストバーン』!!」
ボクは再びリザードンを繰り出し、相手のキュウコンめがけて放つ!
リン「キュウコン、もう1度『オーバーヒート』!」
また『オーバーヒート』を!?
だけど、あの技は連発すると攻撃力が落ちる技のハズ。
威力が落ちた『オーバーヒート』なら『ブラストバーン』で押し返せる!
リザードンの『ブラストバーン』とキュウコンの『オーバーヒート』が洞窟の天井付近で激突し、激しい爆発を起こす!
『ブラストバーン』と『オーバーヒート』は見事に相殺されていた。
マコト「なっ、相打ち!?」
リン「残念でした、『しろいハーブ』で下がった攻撃力を戻しておいたのよねん♪
そして、『パワースワップ』!」
キュウコンから謎の光が放たれ、リザードンの周りを取り囲む!
すると、リザードンは何故か力が抜けたかのように、その場にガクッと崩れ落ちる。
その後、リザードンの周りにまとっていた光はキュウコンの方へと吸い込まれていった。
マコト「リザードン!?い、いったい何が!?」
リン「『パワースワップ』によってキュウコンの下がった攻撃力を、アナタのリザードンに押し付けさせてもらったわ。
さあ、これでもう1回フルパワーで『オーバーヒート』が打てるわよ」
く、パワーで押してくる相手かと思ったらこんなトリッキーな技まで!?
あの子、かなり強い…!
さっきの3人組の比じゃないくらいに!
リン「ふふふ、ロケット団幹部“魔王デビルズ”が一人、このリン様の実力を甘く見てもらっちゃ困るわね!
さあ、終わりにしましょう!
キュウコン、『オーバーヒート』!!」
マコト「何の、こっちだって!!
攻撃力を下げられても問題無い技を使うだけ!
リザードン、『ちきゅうなげ』!!」
翼を広げ、飛び上がったリザードンは紙一重でキュウコンの『オーバーヒート』をかわし、そのままキュウコンを掴み、大空へと飛び上がる!
そのまま中空で円を描くように飛び、遠心力が最大になったところでリザードンは掴んでいたキュウコンを地上へ向けて思いっきり投げ飛ばす!
『ちきゅうなげ』はその遠心力によって、攻撃力に関係なく純粋物理ダメージを相手に与える技だ!
ズドーーーーーーーーーーーーーン!!
さすがの威力に、キュウコンはきぜつした!
リン「んなっ!?私のキュウコンがー!?」
ノゾミ「さすがはマコト様、カッコいい…」
リン「ちょっと、アンタはどっちの味方してんのよ!?」
ノゾミ「マコト様に決まってるじゃない!」
リン「そこまでハッキリ言われるともう怒る気もしないわね…」
ヒカリ・ツバメ「「だめだこりゃ…」」
ロケット団の4人が何やら騒いでいる間にリザードンが地上へと戻ってきた。
マコト「お疲れ様、リザードン。
さて、お前たちロケット団は一体このナナシマで何を企んでるんだ?」
リン「あらあら、何々、私のキュウコンを倒したところで調子に乗っちゃってる?」
マコト「何だと?」
その時、突然雨が降り出した。
リン「“魔王デビルズ”は私一人じゃない、ってことよ」
リンがそう言うや否や、突然ボクらの背後にツンベアーが現れた!
一瞬、野生ポケモンかと思ったが、違う!
この洞窟には、ツンベアーは生息していないハズ…!
「ツンベアー、『きあいパンチ』!」
突然の不意打ちに対処できず、リザードンはまともに攻撃を食らってしまった!!
マコト「くっ、リザードン戻れ!それなら、エルレイド!」
ダメージを負ったリザードンに代り、ボクはエルレイドを繰り出す。
あのツンベアー、なかなか素早いみたいだけど、速さならこっちだって負けない!
マコト「エルレイド、『インファイt』…」
「『アクアジェット』!!」
目にも止まらぬ速さでエルレイドの懐に潜り込んだツンベアー!
これは、いくらなんでも速過ぎる!?
『アクアジェット』の勢いで体当たりされたエルレイドは、そのまま背後の洞窟の壁に叩き付けられる!
「とどめよ、『れいとうパンチ』!!」
さらなる追撃をかけたツンベアーの『れいとうパンチ』をまともに受ける形になるエルレイド!
ドオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオン!!
洞窟の壁を背にしたエルレイドに逃げ場はなく、壁ごと粉砕してしまいそうな威力のツンベアーの『れいとうパンチ』によってエルレイドはその場に膝をつく…!
マコト「エルレイドー!!」
ボクはエルレイドの元へ駆け寄った。
まさか、ボクのエルレイドが一度も攻撃できずに倒されるなんて…!
降りしきる雨の中、姿を現した新たな2人。
リン「遅いよ、レイカ、トモミ!」
トモミ「…それはこっちの台詞」
レイカ「全く、おとぼけ三人組の回収にどんだけ時間かけてんのかと思ったら、一般トレーナーに勝負を挑んで負かされてるなんて、思いもしなかったわ」
リン「う…」
レイカ「ツンベアーご苦労様。
さて、もうここに用は無いわ。さっさと引き返すわよ」
ヒカリ「あの、でもまだ野生ポケモンたちの捕獲が…」
トモミ「その件なら問題ない。こっちはあくまで予備の作戦。
本命の作戦が成功したから、アナタたちを回収にきたの」
ツバメ「え、本命とかあったんですか!?」
レイカ「当たり前でしょ、このレイカ様の計画に失敗があってはならないのよ。
本命とそれ以外の予備の作戦をいくつか準備しておくのは当然でしょ?
というわけで、さっさとずらかるわよ」
マコト「ま、待て!」
レイカ「あら、アナタまだやる気?」
マコト「お前たちロケット団はナナシマで何を企んでるんだ!?」
レイカ「私は慈悲深いから、アナタの命までは取らないわ。
ここで私たちと出会ったことを忘れてくれさえすればね」
そう言いながら、彼女たちは立ち去って行った。
ボクは、その姿を追うことが出来なかった。
ロケット団が去るとともに、さっきまで降っていた雨も止んでいた。
ロケット団幹部、“魔王デビルズ”………
彼女たちがここナナシマで暗躍しているというロケット団のリーダーに違いない。
そして、その“魔王デビルズ”に従っていると思われる“ロケット少女”。
彼女らのここでの作戦は怪電波発生装置を動かすための資金を集めるために密売用のポケモンを捕獲していた、ということだが、それはあくまで予備の作戦だったようだ。
では、“魔王デビルズ”が主体となって行っていた、メインの作戦とはなんだったのか…?
その時、ボクのポケギアに着信があった。
相手はエリだ(昨日、連絡先を好感しておいた)。
エリ『マコトさん、突然でスミマセンが、今すぐ3の島の私たちの基地に来てくれますか?』
マコト「何かあったの?」
エリ『はい、先ほど仲間からの連絡で、ロケット団の幹部による事件が、』
マコト「まさか、“魔王デビルズ”の…!?」
エリ『な、何故その名前を…!?』
マコト「それで、彼女たちは何を!?」
エリ『え、えっと、1の島でポケモン転送システムを管理しているニシキさんの研究所から、半永久エネルギー発生物質である“ルビー”と“サファイア”の石が盗まれたそうで…」
マコト「半永久エネルギー発生装置が…、そうか、そういうことか!」
怪電波発生装置を動かすためのエネルギー源にするつもりか!
エリ『…どうやら、マコトさんは私たちの知らない情報も握っている様子?』
マコト「うん、でもポケギアじゃなんだから、直接会ってから話すよ!」
エリ『うん、じゃあ3の島で待ってる?
あ、それとマコトさんに会わせたい方も来てるから、お楽しみに?』
ポケギアを切ると、ボクは『あなぬけのひも』を使い「いてだきの洞窟」を出た。
洞窟を出たところには、ユキホが待っていた。
どうやら、爆発音に気付いて心配してここまで駆けつけてくれたらしい。
そんなユキホに手短に事情を話すと、ボクらはユキホのトゲキッスに乗って3の島へと急いだ。
しゅじんこう マコト
もっているバッジ 32こ
ポケモンずかん 213ひき
プレイじかん 999:99
ここまでの かつやくを
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To be Continued...
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